ほおっておけない空き家問題について

 多くのメディアで空き家問題が話題になっていますが、今回は空き家問題について少しまとめてみました。

なぜ空き家が問題になっているのか

 総務省によると、全国の総住宅数6242万戸のうち空き家は846万個と空き家率が13.6%となっており、長野県は空き家率19.5%で約5軒に1軒が空き家となっています(平成30年調査)。そして10年後の2033年には3軒に1軒が空き家になるのではないかといわれています。
 
 空き家がふえることで、
 ①雑草、悪臭や虫の発生源になり、周囲の環境に悪影響がある
 ②空き家への不法侵入、放火や不法投棄、空き家が倒壊するおそれがある
 ③空き家や土地を活用できず、地域の発展を阻害してしまうおそれがある など
 の問題が発生し、年々多くの深刻な影響をもたらしています。

空き家を解体してしまえば・・・

 それでは空き家を解体すればよさそうですが、そういうわけにもいかない事情があります。
 例えば、土地の固定資産税について、土地に住宅が建っていることで最大1/6に税額が軽減されますが、土地を更地にしてしまうとこの軽減措置がなくなってしまい、土地の固定資産税が最大6倍にあがってしまいます。また解体した場合、解体費用として100万円から300万円程度かかってしまいます。

 そのため、空き家を解体した場合には費用もかかるし、税金も増えるし・・・ということで、そのままにしているケースや空き家のままずっと相続登記をしておらず、空き家の名義が祖父や曾祖父などのままでどうしたらいいかわからないというケースもあると思います。

空き家対策に関する法律

 増加する空き家への対策として、平成27年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空家等対策特別措置法)が施行されました。
 この法律では
 ①空き家の管理責任は所有者(相続人)または管理者にあるとし、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切な管理に務めること
 ②適切に管理されていない空き家を「特定空家」に指定することができ、特定空家に指定されると固定資産税の優遇がなくなり、土地の固定資産税が最大6倍になる可能性があること、市町村長は特定空家に対して助言・指導・勧告・命令ができ、改善されない場合には市町村が所有者等に代わって空き家の解体などを行うことができ、その際に支出した費用は所有者等の負担となること
 などが定められています。

 特定空家とは
 ・そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
 ・そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
 ・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
 ・その他放置することが不適切な状態があたるとされています。
  
 市町村が特定空家にあたると認定した場合には、土地の固定資産税の優遇措置がなくなり、指導等がなされ、場合によって市町村が解体し、その費用がまるごと請求されてしまう可能性があります。

空き家対策としてできること

 空き家を売買・賃貸など活用したい場合には次のようなことが対策として考えられます。

 ①空き家バンクの活用
 市町村では空き家の所有者から提供された情報を、空き家の利用希望者に紹介する制度があります。
 松本市にもホームページがあり、物件が紹介されています。
 松本市空き家バンク
 
 ②相続登記
 空き家を売買するには空き家の所有者であることが必要ですが、例えば、何代か前に相続が発生していて自分が相続人のひとりだけれど、他にも相続人がいてどうしたらいいかわからない場合には、相続登記を行うことが考えられます。司法書士は、登記情報を読みとり、権利関係の把握、戸籍謄本の取得等による法定相続人の調査、遺産分割協議の作成から相続登記申請手続の代理まで、一貫して行うことができます。

 ③成年後見制度
 空き家の所有者が認知症などにより売買の当事者になることができない場合には成年後見制度を利用することが考えられます。成年後見人は成年被後見人の代理人として財産管理や処分する権利があります。空き家は重要な財産であることが多いので、家庭裁判所と相談しながらになりますが、空き家対策について、前向きに検討を進めることができます。

 また、まだ空き家になっていないうちにできる対策としては次のようなことが考えられます。

 ①遺言
 遺言を遺すことで、不動産を確実に承継することができます。

 ②生前贈与
 建物を生前に子どもや孫に贈与することで、建物の利活用を早めに進めることができること、相続トラブルを起こりにくくすることができます。ただ、贈与税などの税制度に注意する必要があります。(税制度については税理士の先生が専門になります。)

 そのほかにも遺品整理や断捨離を行う、建物の査定やリフォーム・解体をした場合の費用の見積もりなどを一度行ってみるというのも今後の第一歩になると思います。

空き家について困ったら・・・

 ・空き家となった土地を隣の人が購入したいと言っている。亡くなった祖父名義なのでどうしたら・・・
 ・親が入院し、退院の見込みがなく、実家が空き家になっている。今後の管理などはどうしたら・・・
 ・両親が亡くなり実家は兄弟で相続したが、だれも住んでおらず、活用したいけれど、兄が今どこにいるのかわからずどうしたら・・・

 など、お困りのことがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。
 問題解決に向けて、一緒に考えていきたいと思っています。