相続手続きの落とし穴②
先日、このようなお話を耳にしました。
母を相続人にと思って相続放棄したら・・・
父、母、娘2人の4人家族の父が亡くなり、相続人は母と娘さん2人の3人でした。
父と母はとても仲がよく、亡き父が建てた家に母はこれからもずっと住みたいと言っていたことから、父の遺産はすべて母が相続したらいいんじゃないかと娘さん2人で話し合いを行い、母に提案したところ、母も納得してくれたのでその方向で相続手続きを進めることにしました。今回、相続人が3人なので遺産分割協議書を作らなければならないところ、遺産分割協議書を作るのはめんどくさく、娘さん2人はどうせ一切相続しないのだから、この際、相続放棄をしてしまえば、母だけが相続人になると考え、娘さん2人は家庭裁判所で相続放棄の手続きを行いました。これで亡き父のすべての遺産を母が相続できると思ったところ、亡き父の弟さんから「兄さんの遺産について、兄さんの奥さんも交えて遺産分割協議をしたい。ついては遺産のうち、預貯金の法定相続分は受け取りたい。」との電話がかかってきました。亡くなった父は3人兄弟で父の両親はすでに亡くなっていましたが、弟と妹が健在でした。これはいったいどういうことなのでしょうか・・・。

解説
相続については、相続する権利がある人は、配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹の4種類ですが、相続する順番が法律で決められており、その順番ですが、配偶者は常に相続人となり、血族相続人については、第1順位は子、第2順位は直系尊属、第3順位は兄弟姉妹と定められており、この順番が優先します。
今回のケースの場合、父が亡くなり、母と2人の子がいますので、配偶者である母と、第1順位である子2人が相続人になります。
そこで、通常、この3名の間で遺産分割協議を行い、誰が遺産を受け取るか決めることになります。
このとき、2人の娘さんは相続をしないという内容でしたので、相続放棄をするという選択をとりました。
相続放棄とは、その相続に関しては、はじめから相続人とならなかったものとみなされます。(民939条)
また相続放棄は代襲原因にはならないので、娘さんに子どもさんがいた場合、子どもが代襲相続人になることもありません。
ただ、第1順位の相続人である子全員が相続放棄をした場合、第1順位の相続人がはじめからいなかった、ということになるので、第2順位、第3順位の方に相続権が移ってしまいます。
今回の場合、第1順位の相続人が全員相続放棄をしたので、第2順位の相続人に相続権が移り、第2順位の亡父の両親はすでにおりませんでしたので、第3順位の亡父の弟と妹が相続人となり、結局、母と弟、妹の間で遺産分割の協議を行ったということでした。
相続する人を1人に集中させたいというときに相続放棄を利用する場合も考えられますが、その場合、第2順位、第3順位の相続人に相続権が移ってしまう可能性もありますので、慎重に判断することが必要です。検討される際は、ぜひご注意ください。
