法定後見制度について
法定後見制度とは、認知症などで判断能力が不十分な方々の権利や財産を守り、意思決定を支援することを目的として、家庭裁判所によって選任された成年後見人などが本人を法律的に支援する制度です。
例えば、
・物忘れがひどくなり、預貯金の管理がむずかしくなった
・親が外出中に行方不明になることがあり施設入所を考えている
・障害のある子の将来が心配、私たちが亡き後のその子のために
・父の入院費や施設利用料、生活費をまかなうために、父名義の株や不動産を売却したい
・訪問販売なのか使うはずのない健康器具で部屋があふれている独居の叔母が心配
などといった状況がある場合に利用することができます。
法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」、「保佐」、「補助」の3つの制度があり、それぞ成年後見人、保佐人、補助人が支援にあたります。判断能力があるかどうかは医師による診断書で判断します。
◎制度の概要
後 見 | 保 佐 | 補 助 | |
対象となる方 | 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 (日常の買い物などが難しく、ほとんど判断できない方) | 判断能力が著しく不十分な方 (しっかりしている時もあり、日常の買い物はできるけれど、判断に迷うような重要な契約などができない方) | 判断能力が不十分な方 (日常の買い物のほか重要な契約などもできそうだが、不安があるような方) |
申立てをすることができる方 | 本人、配偶者、4親等内の親族、検察官、市町村長など | 同 左 | 同 左 |
成年後見人などの同意が必要な行為 | 民法13条1項所定の行為(借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築など) | 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」(民13条1項所定の行為の一部) | |
取消しが可能な行為 | 日常生活に関する行為以外の行為 | 同 上 | 同 上 |
成年後見人などに与えられる代理権の範囲 | 財産に関するすべての法律行為 | 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 | 同 左 |
◎制度利用の流れ
申立て → 家庭裁判所の審判手続 → 審判が確定・登記 により、開始します。
申立てから審判までの期間は、おおむね2か月以内であることが多いです。
申立て費用は、収入印紙:申立て1件につき、800円~、登記手数料:2,600円、郵便切手代がかかります。なお、申立書の作成や申し立て手続きを司法書士や弁護士に依頼する場合は、別途報酬がかかります。
法定後見制度の利用開始後に、報酬が発生することがありますが、報酬の額は家庭裁判所が判断します。
成年後見制度について、①自己決定権の尊重、②現有能力の活用、③ノーマライゼーション、④本人の利益保護の4つを基本理念とした制度となっています。
2025年にはおよそ高齢者5人に1人、2060年には高齢者4人に1人がなると推計されています。ともに自分らしく生活できる社会になるよう制度をうまく活用していただけたらと思います。詳しい内容などにつきましてはお気軽にご相談ください。