親亡き後の問題 ~将来に備えて~

 親亡き後問題とは、親が障害のある子どもの支援をしているところ、将来、親が亡くなったり、判断能力などが低下した場合に、子どもの財産管理や身上保護をだれがどうやって行うかという問題です。
 障害のある子どもについて、お金の管理や役所の手続きを親がしていることが多いと思います。ただ親が高齢となり、認知症を発症するなど、もし何かあった場合、子どものお金の管理や役所への手続きを頼む人が身近におらず、子どもが孤立してしまい、生活が不安定になってしまう可能性があります。最近ではテレビ、新聞、インターネットなどで特集されていることもあり、社会的に注目されてもいます。今回はそうなる前にできることを、少しまとめてみたいと思います。
 対策としては、①法定後見制度の利用、②任意後見制度の利用、③遺言の利用、④民事信託の利用などがあげられると思います。

①法定後見制度の利用

 子どもに判断能力がない場合には、法定後見制度を利用することが考えられます。

 その際、当初は親が後見人等となって本人を支援し、親が亡くなった場合には家庭裁判所が新たな後見人を選任するリレー方式の方法
 親族間で複数人が後見人等なり、親が亡くなった後も残った親族が引き続き支援する方法
 親とともに司法書士、弁護士などの専門職後見人等となり、親が亡くなった後は専門職後見人等が引き続き支援する方法

が考えられます。ポイントとしては当然ですが支援を途切れさせず、親の思いをつなげていくことにあります。

②任意後見制度の利用

 子どもに任意後見契約を結ぶ判断能力がある場合、親も子どもも信頼できる人との間で任意後見契約を締結する方法があります。
 支援を任せたい人、任せたい事務内容を決めることができるので、本人の意思を尊重した支援を期待することができます。

③遺言の利用

 障害のある子ども自身に遺産を多く残したり、子どもの支援を任せたい親族に多く遺産を渡す代わりに自分が亡くなってからの支援を依頼することができます。ただ、自分が亡くなってからの支援を確実に望めるわけではないので、注意が必要です。

④民事信託の利用

 信託とは、財産を持っている人(委託者)が信頼できる人(受託者)に、その財産の運用で利益を得る人(受益)のために、自分の財産の管理や処分する権限を任せる制度です。
 例えば、家族などにアパートなどの財産の管理を任せ、そこから出た利益などを障害のある子どもである受益者に渡したりすることが考えられます。民事信託を利用することで、親が亡くなっても障害のある子どもの生活資金を確保することができ、親が亡くなった後でも複雑な相続手続きを経ることなくスムーズに障害のある子どもをサポートすることができます。

 以上にあげた4つの制度を組み合わせることもできます。ただ、それぞれの制度にももちろんメリット、デメリットがあり、どうやって対応していくか検討するのに長い時間が必要だったりします。将来に備えて、少しずつ考え、準備していくことが大事ではないかと思います。