任意後見制度について
任意後見制度とは、将来、判断能力が不十分になったときに備えて、あらかじめ十分な判断能力を有するうちに、任意後見人になってほしい支援者と将来委任したい事務内容を公正証書による契約で定めておき、判断能力が不十分になった後に、支援者である任意後見人が委任された内容を本人に代わって行う制度です。
例えば、
・今は元気だけれど、将来認知症などで判断能力が衰えたときに人に迷惑をかけたくない
・一人暮らしで、将来、入院したり、認知症になったりしたらどうしよう
・子どもがおらず、親族は兄弟姉妹のみで、将来のことが心配
などといった場合に利用することが考えられます。
任意後見契約でできることとしては、
・預貯金の管理
・定期的な収入、支出の管理
・介護保険サービス、施設入所などの契約
・不動産の売却
・行政官庁手続き(年金、税金の申告など)
があり、このなかから将来任せたい事務内容を決めて契約を結びます。
また、任意後見制度とあわせて見守り契約や任意代理契約を行うことができます。これは、現在、判断能力に問題はないけれど、将来が不安で今から少しでも安心したい方や病気や障害などで財産の管理が難しい場合などに利用することが考えられます。
①見守り契約:判断能力が低下する前から定期的に面談をしたり、連絡をとったりすることで、生活の状況や健康状態を確認し、見守りを行います。
②任意代理(財産管理)契約:判断能力がしっかりしていても、病気などで身体を思うように動かすことができないなどの事情がある場合に、例えば通帳の保管や預金の引き出し、各種支払いなど契約で決めた手続きを代わりに行います。
◎任意後見制度の利用の流れ
元気なうちに任意後見人、任せたい事務内容を決める → 公証人役場で任意後見契約を締結 → 判断能力の衰え → 家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申立て → 任意後見監督人が選任 → 任意後見の開始
任意後見契約は公正証書を作成する必要があります。費用として、公正証書作成基本手数料:11,000円、登記嘱託手数料:1,400円、法務局に納付する印紙代:2,600円、その他切手代などが必要となります。
また任意後見契約は判断能力が衰えたと感じられたときに、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者などが家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行うことではじまります。任意後見契約が開始すると、任意後見監督人が任意後見人の監督を行います。これは、任意後見人の不正な財産管理行為などを防ぎ、本人の財産を守るためにあります。
任意後見人への報酬は、任意後見契約で決めた額が、任意後見監督人への報酬は家庭裁判所が決定します。
法定後見制度との大きな違いは、判断能力があるうちに支援者と支援内容を選ぶこと、支援者である任意後見人を自ら選ぶことができることにあります。これからのことを任せたい人がいる場合には利用を考えてみるのもいいのかなと思います。もっと知りたいことなどありましたら、お気軽にご相談ください。